「聖地巡礼」の版間の差分

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2014年1月25日 (土) 10:25時点における最新版

聖地巡礼(聖地じゅんれい)とは、熱心なファン心理から、自身の好きな著作物などに縁のある土地を聖地と呼び、実際に訪れることをいう。宗教的な聖地を訪れる本来の巡礼から転じた俗語である。

概要[編集]

本来巡礼とは、宗教において、重要な意味を持つ聖地に赴く宗教的な行為の事である。

ここから転じて、小説映画、近年では漫画アニメなどの物語の舞台となった場所やスポーツなどの名勝負の舞台となった場所等、本人にとって思い入れのある場所を「聖地」と呼び、この「聖地」を実際に訪れ、憧れや興奮に思いを馳せることを、「巡礼」と呼ぶ様になった(後述)。尚、一般には各フィクションの舞台になった場所を探訪することから、「舞台探訪」、あるいは映画などでは「ロケ地巡り」などと呼ばれる。

自身に取って特別な思い入れのある土地の事を聖地と呼ぶ事自体は、「○○のメッカ」といった表現がある様に決して新しい物ではない。こうした「自身にとって思い入れのある土地を訪れる事」は古くから観光の目的の一つとして一般的であり、古くは寺社への信仰などでその傾向が見られ、自分の故郷に分霊などを行っている。近世から大衆文化が爛熟すると、落語歌舞伎浄瑠璃、または浮世絵(風景画)や紀行文に魅了され、その地を訪ねることは当時の風流人からも多く見られている。また、明治以降はその傾向が著しくなり、熱海温泉が尾崎紅葉の『金色夜叉』の舞台になると、熱海が随一の新婚旅行スポットとして発展を遂げるなど、そういった舞台探訪は庶民にも根強く浸透した。そして小説、映画の舞台になることは、地方にとっても観光の起爆剤であり、また格好の宣伝であった。戦後においても川端康成の『雪国』(越後湯沢温泉)、壺井栄の『二十四の瞳』(小豆島)、TVドラマの『おしん』(銀山温泉)など観光振興に一役買った作品は枚挙にいとまがなく、舞台となった市町村には決まって観光客が急増し、後に記念館や記念碑などが設けられるようになり、放送終了後も一部のファンによる探訪が持続するため、意義が大きい。そして、1980年代から漫画、アニメ、ゲームが大衆文化で若年層を中心に大きな地位を得ると、熱心なファンらによる舞台探訪が行われるようになった。

そして、その舞台探訪の概念を宗教信仰にたとえ、聖地巡礼と呼ぶようになったのはインターネットの普及による所が大きい。様々な作品等のファンサイトによって聖地が特定され、そのファンの間で広まる事が多いほか、巡礼を果たしたファンがWebページを用いて「巡礼の概要報告」を行うこともある(漫画やアニメ等、絵のある作品の場合は作中の場面とそれに該当する現地の写真を掲載して、それらを比較するという形態を取る事も多い。更に、その場面に登場するキャラクターコスプレをして、同じポーズをとって写真に収まっているというものも存在している)。巡礼の対象となる著作物は幅を広げており、外国のアダルトゲームファンが来日して、エルフ本社(ゲームソフト会社)を巡礼したという例も存在する)。

地域への影響[編集]

メリット[編集]

有名作品の舞台となるとその人物の思いや心境に馳せようと多くの人が訪れる事となり、観光資源としての価値が生ずる。また、それに関連グッズなどが売れたり、それに付随して特産物や土産物なども買われていくだけでなく、宿泊、食事、交通などの需要も上がる。加えて、自治体の自発的な宣伝でない自然発生的なものもあるため、宣伝、広告に費用を要しない。更に、連載、放送終了後も一部のファンによる探訪が断続的に行われる。したがってこれらは観光振興として自治体としてもシナジーが大きい。

このため戦後から、町興しの一環として地元自治体、観光協会およびフィルム・コミッション等が積極的に作品制作に協力したり、作品の舞台となった事実を宣伝し活用する例も増えている(地元の商店などが作品ポスターを掲示して盛り上げたり、ロケ地などの関連ポイントの地図を作製したり、地元サイドによって来訪者用のノートが設置される事もある)。その主となっていたのは小説、映画、TVドラマであり、漫画やアニメに関しては消極的であったが、鳥取県境港市が『水木しげるロード』を整備し、鬼太郎のまちとしてPRして成功を収めたことで転機を迎え、後に富山県氷見市が『忍者ハットリ君』に因んだ町おこしを行うなどしている。また、近年では観光振興とは別に作品の舞台となった都市をPRする例も多く、埼玉県春日部市では『クレヨンしんちゃん』の“野原家”に特別住民票を与えたりしている。このような都市は地方のように観光に依存する必要性が少ないものの、全国的な知名度アップを狙ったPR目的で話題を作ることが多い(だが、これによって春日部市では海外、特にアニメが放映されていた国からの観光客が増加した)。

2005年、『電車男』ヒットに伴い、オタク文化(俗に萌え文化、萌え産業)が一般に浸透するようになると、一般知名度が低いマニア向けアニメ作品などによる経済効果もニュースで採り上げられるようになっており、長野県大町市(『おねがい☆ティーチャー』『おねがい☆ツインズ』)、埼玉県鷲宮町(『らき☆すた』)や宮城県七ヶ浜町(『かんなぎ』)などはその典型例であるといえる[1]。これらは前述のドラマ、映画などと比較すると影響者の絶対人口が少ないものの、関連グッズ販売の回転率が良いことが特徴であり、地元商店街などに活性化をもたらす例もある(また、ドラマや映画と違い出演俳優の財産権が発生しないことで高額な広告料が不要であり、グッズを比較的安価で制作できるのも大きい点である)。特に鷲宮町の事例は、おたく向けコンテンツの町興しへの活用の成功例として学術的・経済的見地から高い注目を集めるまでとなった。また、和歌山県みなべ町では『びんちょうタン』が地方公共団体の運営施設のキャラクターとして使われた。

2009年には、お台場に実物大のガンダムを設置したことが話題になり、わずか公開2週間で見物客が100万人を突破し、親子2代のファンや海外のファンなども多く訪れた。一方、神戸市長田区では漫画家、横山光輝に因んで巨大な『鉄人28号』像が建設されるなど、お茶の間の話題に上ることも多くなっている(既に『三国志』に因んだ町おこしは行われている)。また、作者尼子騒兵衛の出身地である兵庫県尼崎市が『忍たま乱太郎』の聖地として若い女性ファンが多く押し寄せるようになったことを読売新聞が記事として掲載し、見出しに「萌え」という表現を用いている。

また、地元を舞台とした新たな作品を世に送り出すため、自治体が中心となって漫画やライトノベル等のコンテストを主催する例もある。熱心なファンが愛媛県松山市への巡礼を行った映画『がんばっていきまっしょい』も、松山市が主宰する「坊っちゃん文学賞」を受賞した青春小説が原作であり、この試みが成功した例である。

デメリット[編集]

巡礼の対象となっている場所には一般の住宅街や学校等が含まれている場合もあり、事情を知らない住民に不安を与えるなどして日常生活の迷惑になる可能性がある。テレビ番組が巡礼のきっかけになった場合、その放送期間は3ヶ月から1年間程度なので、急増した巡礼者(観光客)の受け入れ態勢が整った頃にはブームが去って、対象となった場所に混乱と負担を残すだけに終わることがある。特にUHFアニメの場合は実写作品と異なり撮影が行われることもないうえ、当該地区での放映が行われないことも多く、当地での認識も低いとされる。更に巡礼者が(事情を知らない人間から見て)奇怪と見られる行動をすることがあり、不審者扱いされることが多い。作品によっては発行元が「聖地巡礼自粛のお願い」を呼びかけた例もある。

極端なケースでは、一部の漫画の影響を受けた暴走族(特に違法競走型暴走族)がその舞台となった場所で暴走を繰り返したため、これに対する妨害策によって地元住民や観光業者までが不利益を被ったケースもあるため、舞台探訪は探訪者のモラルに大きく委ねられる観光行動であるといえる。

聖地[編集]

巡礼の対象となる場所は「聖地」と呼ばれるが、この「聖地」の主な種類には以下の物が挙げられる。

Case1 作品のモデルとなった場所
  • 実際に作中に舞台として出て来た実在の場所
  • 地名等は変えられながらもモデルと推定出来る場所
Case2 映像作品の撮影場所
Case3 出生地等といった作者等の縁の土地
Case4 制作会社
Case5 イベント・大会・試合等の会場となった場所

この他にも様々な種類があり、「登場キャラクターの名前の元ネタとして使われた」等と、直接的な関わりがない様な場所であっても巡礼の対象となる場合もある。

聖地と呼ばれる代表地の例[編集]

事象1[2]

作品名 : 『フルメタル・パニック?ふもっふ
聖地の種別 : 『Case1』・『Case2』
聖地の所在地 : 『東京都調布市 / 京王線沿線』
主なスポット
仙川駅周辺
仙川駅
仙川商店街
東京都立神代高等学校
調布駅周辺
調布駅
京王多摩川駅周辺
京王多摩川駅
ライオンズマンション調布南
多摩川河川敷

出典[編集]

  1. 北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑准教授のチームは鷲宮町のケースを分析して「鷲宮町の経験から考える文化創造型交流の可能性」と題した論文を発表。「アニメ聖地巡礼型まちづくり」と命名している。
  2. 「柿崎俊道著,聖地巡礼アニメ・マンガ12ヶ所めぐり(2005)」掲載地

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

聖地巡礼の画像[編集]

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