目的語

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目的語(もくてきご、object)は、構成素文の成分の一つ。客語または補語対象語)と呼ぶ場合もある。ロマンス諸語では目的補語と呼ぶことが多い。日本語ではおもに格助詞「を」や「に」で示される。目的語を示す目的格と呼ぶ。

行為の直接的な対象を表す直接目的語(主として対格、日本語では「を」等で示される)と、その行為によって間接的に影響を受ける対象を表す間接目的語(主として与格、日本語では「に」等で示される)に分類される。

英語

英語においても、日本語に直訳した場合に「……を」・「……に」の「……」に相当するまたは(「が」「で」なども格助詞であり、「日本語に訳した場合に格助詞を伴う語句」という説明は誤り)と理解して大きな間違いはないが、動詞の語法や文型との兼ね合いから若干の注意が必要となる。というのは、英語には助詞がなく、それに相当する役割を動詞の語法(文型)と前置詞の組合せが担っており、それとの兼ね合いが問題となるからである。

ここでは、目的語を「動詞の目的語」と「前置詞の目的語」に分類して説明する。目的語になれるのは、名詞動名詞不定詞代名詞(名詞句・名詞節を含む)である(動詞の目的語か前置詞の目的語かによらない)。代名詞のうち、人称代名詞疑問代名詞関係代名詞は目的格をとる[1]

以下では基本5文型に従い、次の例文を用いて説明する。

  1. I go to school. (S+V: 第1文型) 私は学校 通う。
  2. I love you. (S+V+O: 第3文型) 私はあなた 愛する。
  3. He gave you a lot of money. (S+V+IO+DO: 第4文型) 彼はあなた たくさんのお金 あげた。
  4. This news made me sad. (S+V+O+C: 第5文型) そのニュースは 悲しませた。

上記の例文において S は主語、V は動詞、C は補語、O・IO・DOは(動詞の)目的語・間接目的語・直接目的語の略称である。ここでは第2文型 (S+V+C) は挙げていない。

前置詞の目的語

まず、上記の例文 1. の直訳は、「私は学校に通う」である。この場合、“to school”は「学校に」と直訳されるが、これを「動詞 go の目的語」とは考えない。このように、「……を」・「……に」に相当する語句であっても、to, in などの前置詞を伴ってはじめて「……を」・「……に」という意味を成す場合には[2]、「動詞の目的語」とは考えない。この例文における“to school”の“school”は「前置詞 to の目的語」である。一般に、前置詞に続く名詞・動名詞・代名詞(名詞句・名詞節を含む)が前置詞の目的語である。前置詞の目的語は「……を」、「……に」(に類する)意味に限定されない

動詞の目的語

第2文型以外で、動詞の直後に、前置詞を置かずに現れる名詞または代名詞は、動詞の目的語である。ただし、動詞とその名詞または代名詞との間に、それを修飾する形容詞や、形容詞をさらに修飾する副詞、および限定詞冠詞など)を伴うことがある。それらの場合でも、前置詞は挟まない。

  • 例文 2. において、“you”は動詞 love の目的語である。
  • 例文 3. において、“you”は動詞 give の間接目的語 (IO)、“a lot of money”は動詞 give の直接目的語 (DO)である。
  • 例文 4. において、“me”は動詞 make の目的語である(“sad”は目的格補語である「動詞 make の補語」というより、むしろ目的語“me”の補語 )。

循環定義

受験参考書等においては、「自動詞他動詞の定義」、または「5文型の定義」と「動詞の目的語の定義」とが循環定義になっていることがある(つまり、それらを知らない人にとっての明確な定義になっていない)。

典型的な「自動詞・他動詞の区別と目的語の循環定義」の例として、次のものがある。

  • 自動詞は、目的語を必要としない動詞である。
  • 他動詞は、目的語を必要とする動詞である。
  • 目的語は、他動詞の直後につく名詞である(厳密には直後とは限らない)。

また、「5文型と目的語の循環定義」の例として、次のものがある。

  • 第3文型は、SVO である。
  • 第4文型は、SVOO である。
  • 第5文型は、SVOC である。
  • 目的語とは、第3 - 5文型に現れる O のことである。受験参考書についての議論は本記事とは無関係である。

ドイツ語

ドイツ語では、与格(Dativ、3格)の目的語を間接目的語(Dativobjekt、3格目的語)、対格(Akkusativ、4格)の目的語を直接目的語(Akkusativobjekt、4格目的語)と呼ぶ。冠詞形容詞代名詞などの格変化において、与格と対格を区別する。

他動詞とは直接目的語をとる動詞のことをいい、それ以外の動詞は自動詞と呼ぶ。例えば、“Ich liebe dich.”(英語: “I love you.”) における dich は対格であり、したがって liebe (不定形: lieben)は他動詞である。一方、“Er half dir.” (英語: “He helped you.”)における dir は与格であり、したがって half (不定形: helfen)は自動詞である。

また、目的語を文頭に置いた場合、主語動詞の次に置かれる(V2語順)。

  • Ich liebe dich. → Dich liebe ich.
  • Er half dir. → Dir half er.

通常、目的語と副詞が動詞の後ろに並ぶときは、副詞、目的語の順に並ぶ。

  • Ich lese nachts das Buch. (英語: I read the book at night.)

脚注

  1. 現代英語では疑問代名詞・関係代名詞 whom の代わりに、本来は主格である who を使うのが一般的である(目的語として前置詞に続く場合を除く)。
  2. to 不定詞(to に続くのが動詞)はこれに含まない。ただし、不定詞には副詞的用法もあり、この場合は動詞の目的語ではない。

関連項目